アップル、Airbnb(エアービーアンドビー)、スクエア・・・これらの共通点は分かりますか? いずれも、シリコンバレーで成功した企業ですね。
実はもう1つ、共通点があります。
それは、創業者とアートとの関係が深いということです。アップルの創業者スティーブ・ジョブズはカリグラフィーを学んだ経験があります。Airbnbの起業メンバーの一人であるジョー・ゲビアは学生時代にアートを学んでいました。スクエアのジム・マッケルビーは、アーティストとしても活躍しています。
このように、トップ経営者がアートの素養を持っていたことから、ビジネスとアートとの間には、何らかの関係があるのではないかと言われるようになりました。そして今、ビジネスシーンにおいて「アート思考」という言葉が注目を集めています。
アート思考とは
アート思考とは、一言で言うと「アーティストのように思考」する手法のことです。
では、具体的にどのようなことを実践すればよいのでしょうか。
アート思考の第一歩は先ず、本質的な問いを立てるということから始まります。
その有名な例をご紹介します。
東京・ロンドン・ニューヨークをベースに活動するデザイン・イノベーション・ファームのタクラム(Takram)は、「荒廃した未来における水筒をデザインする」という課題に対して、「人工臓器をつくる」と答えを出しました。
多くの人が「未来の水筒をデザインする」という課題に対して高機能な水筒を思考していたのに対し、タクラムのメンバーは、この課題を「荒廃した未来に人間が生きるための水分をどう確保すればよいか」という本質的な問いとして再定義を行いました。
その結果、高機能な水筒をつくるという発想から「人工臓器をつくる」という高機能な水筒を作るという発想からは到底考えつかない、大きな飛躍をすることができました。
物事の本質を捉えるためには、俯瞰的な視点を持ちながら、本質的な問いを考えることが重要だと分かる例と言えます。
ビジネスとアートの関係性
「ビジネスとアート」
この2つは一見相いれないもののように思われます。
では、ビジネスマンがアート思考を学ぶことでどのようなメリットがあるのでしょうか。そして、なぜビジネスにアートが必要なのでしょうか?
現代のビジネスが置かれている社会に目を向けてみましょう。
現代は不透明な時代だと言われており、社会的に解決していかなければならない問題が山積しています。その原因として、複雑な現実の中から、何が課題なのかが分かりづらくなっていることが大きな要因として言われています。
そのような時代だからこそ、課題発見能力が非常に重要になっています。
これからの時代のビジネスマンは、正しい問いを発見するセンスを養っていく必要があります。しかし、今まで課題発見能力を養う様な教育は今まで行われてこなかったために、どのようにその力を養えば良いのかがわからないという人が大半ではないかと思います。
そこで役立つのが「アート思考」なのです。アート思考の問いを発見し、成果を生み出すという思考プロセスは、まさにアーティストたちがやってきたことに他ならないからです。
現代アートとアート思考
時代を先取りしていることもアートの特徴です。
アーティストは「炭鉱のカナリア」ともよく喩えられます。彼らの鋭い感受性が時代の変化をいち早く掴み、常識にとらわれない自由な発想によって作品を生み出していきます。
つまり、現代アートには、未来の社会が映し出されているのです。
これからの時代に活躍できるビジネスマン・起業家には、時代の変化を察知して新たなビジネスを生み出すことが求められます。
新たなビジネスを生み出すためには、変化する時代の中で多くの人が抱える課題を発見し、より良い解決策を生み出していくアート思考の考え方が重要になってくるのです。
また、新たなビジネスを生み出すためのトレーニングとして、自らの頭で考えながら 現代アートを鑑賞することが課題発見能力を養う一つの方法として効果的と言われています。
その理由として、優れたアーティストの作品には、必ず問いが存在しています。鑑賞者はその問いを受け取り、自分で考えて理解しようとします。現代アートは決して「分かりやすい」ものではありません。むしろ「分からない」存在です。しかし、「分からない」ことに接したとき、自力で考え、解決していこうとする態度こそ、ビジネスの現場でも求められているものではないでしょうか。
このような現代アートの有用性が認められてきた背景もあり、近年日本にも社員に現代アートを鑑賞させる企業が増えてきています。
例えば、ANA(全日本空輸)は、社員に美術鑑賞を教えるセミナーを開催しています。また、ポーラは新入社員研修において名画鑑賞を取り入れています。
このように、企業でも現代アートとアート思考が注目されてきているのです。
まとめ
以上、ビジネスの世界で注目されるアート思考について述べてきました。
アート思考とは、「アーティスト(特に現代アーティスト)のように、本質的な問いを立てながら、自らの頭で考えていく思考法」のことを指します。
そして、不透明な時代にこそビジネスにおいても本質的な問いを立てたり、時代の先取りしたりといったアーティストがやってきたことを取り入れることが重要になってきています。
また、その能力を養う方法として、現代アートを鑑賞することで、答えの出ない課題に対して根気強く考え続ける姿勢が養われていくと多くの企業でも注目されてきています。
このようなアートにおける思考を、ビジネスに応用することで、新たなビジネスの創造につなげることができるはずです。
ぜひ、目の前の業務に追われてしまうだけの日々ではなく、意識的に時間を作り、本質的な問いを立てて俯瞰的な視点で物事を考えられるビジネスマンを目指していきましょう!